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うぐみの森~悲哀と怨念の一里塚 [ヨロン島]

「うぐみ」が泣いている・・・ 冬枯れの森の木立を縫って声なき声が「うわーうわー・・・・」 ほの白い灯油ランプの影で、皆が声を押し殺し慰霊の念を捧げる。

道無き道、そう、種々の亜熱帯樹や草木で覆われ、鬱蒼とした昼なお暗いウドノスの丘。 旧公会堂へ通ずる崖に這い蹲って伸びる細道は、うぐみの悲しみの血色に塗られた藪道・・・この世に生を受けてはならぬ子の、二度と帰ることを許されぬ死出への旅立ちの道が、細く暗くウドノスの森へと蛇行しながら伸びている。

 

顔面蒼白の、臨月間近の妊婦は白絹をまとい、朱模様の赤い帯を腰に無造作に巻き付け、古木の杖で重身を支え、息絶え絶えに終の床へ、運命の子らを腹に抱き辿り着く・・・中には、途中で息絶え、崖下の怒号の逆巻く渦波へと身を捧げていく隠女もいた・・・と聞く。 

「うわー、うわー、うわー・・・・・」決して弔われない霊たちの・・・悲しいサガの運命を背負い、この世と離別したおんな達の深淵からの、悲痛なもがきと叫び・・・ ウドノス一帯の岩窟、雑木は悲霊の終の棲家。 かすかな、うぐみの切実な悲哀に満ちた声の余韻が、いつまでも耳に付いて離れない。

・・・・ 幾星霜、ときは遷りユンヌのヒブラも祓われ恋のさかりばとなり・・・怨念の宿り木もいまや世の案山子となる。 ウドノスの丘は異国の情緒を映すギリシアの村へとすっかり変貌、かつての面影は表面的には、みじんも無い・・・ あはれ、鎮魂のこころと祈りを、報われずしてこの世から露と消え去った悲哀の女霊達に、少しでも手向けよう・・・ せめてもの弔いに

ユンヌの原像も変容し・・・また、心の闇が開け、かつてのウドノスの闇・・・魔界は夢幻の世界へ・・・ユンヌよ どこへ行く。 つらい過去の大地は動かずとも人の心は動き、ぶつじ(物事)はすさまじく変転し、まさに台風一過、古き時代は去りゆく・・・・永久に。

うぐみの森・・・・・いまなお、その名残を、その辛い過去史をとどめおく、心ある人の一里塚・・・ いつまでも 苦難の十字架を心に刻んで欲しい。 二度とうぐみの悲霊が再臨されませぬよう・・・ 

こころから、せめてもの 鎮魂の礼を尽くしたい・・・・ 合掌

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ヤッピーやすこ

思わずゾクッとしました。3年ほど前にギリシア村とウドノスの海岸へ勧められていって、異国情緒豊かな満ち足りた気持ちで一日を過ごしたことを鮮明に覚えております・・・しかし、過去には、ロイさんが書いているような暗く悲しい物語の舞台だったのですね。
でも、今では、仰るとおり様変わりして、そのような過去の忌まわしい状況はなく、リゾート雰囲気一杯のところ。今度、訪問するときには、ロイさんの気持ちをしっかり覚えておいて、心でお祈りして期待と思います。 今度は、いついけるか分かりませんが・・・でも、必ず、もう一度行きたい島の一つです。
貴重な過去史やお話を有り難うございました。
by ヤッピーやすこ (2006-03-03 19:30) 

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